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思ったことを恥ずかしげも無く

十二月になっても僕は

友達にkindleを安く譲ってもらったので、これまた友達がオススメしていた川村元気『四月になれば彼女は』(文芸春秋)を買ってみた。

kindleはちょっと文字入力が遅いかなと思うことがあるが、使いやすい。Amazonのポイントもすごくもらえてありがたい。『四月になれば彼女は』は実質半額程度で買えた。紙のメディアにこだわりはそこまで強くないので、ちょっと気になるくらいの本をガンガン買っていこうかと。本として持っておきたいものは買いなおすと思います。

 

さて、『四月になれば彼女は』なかなか良かった。

bookmeterの感想にも書いたけれど、まさに現在(≠現代)の恋愛小説。

愛の情で愛情ではなく、愛と情で愛情になってしまった登場人物たちが、結局愛って何なのよと右往左往する。「わかる」と言わざるをえないのが悔しい。

付き合ってはいるが、セックスレスでかつ、本当に相手を好きなのか…?と悩む主人公に自身を重ねられるからこそ、自分はこれを恋愛小説だと思う。そんな人が多いという読みで著者はこれを書いてると思うと、やはりプロデューサーってすごいなと思うのだった。

それゆえか、まとまりが良すぎるのが珠に傷というか、穏健なのだ。

 

この穏健さを無くして性愛と愛について突き詰めていくと村田沙耶香の小説のようになっていくのだと思う。

結婚相手を性的な対象にすることが完璧に「気持ち悪いこと」になっていて、結婚相手以外としか性行為をしない社会。男女ともに性欲が街中で処理できるような施設がある社会。子どもを10人産めば一人殺せる社会(男でも出産できる)。私たちの目から見れば異常としか写らない社会だ(とおもう)が、パートナーを性的に見られないという状況が恋愛小説に表象されて、それがヒットすると思われる(共感される)以上、今が恋愛概念の過渡期であって、村田沙耶香的世界への移行も十分ありえると思われるのだ。

結局、『四月になれば彼女は』でも性愛の問題は閉じていなかったように思える。

村田沙耶香の『殺人出産』は、ジェンダーSF研究会主催のセンス・オブ・ジェンダー賞の少子化対策特別賞というユーモア溢れる賞をとっているし、興味がある人は読んでもらいたい。文庫化もしてるし。

『コンビニ人間』ではなく『殺人出産』で芥川賞を取っていれば、もっとファンが多かっただろうと思わざるをえない。

 

もうひとつ。『四月になったら彼女は』で、名前は出てこないのだが『her/世界でひとつの彼女』と思しき映画がBGMとして登場する。

女性人工知能と恋愛をする映画(だから世界でひとつ)なのだが、BGMの選択としてとても正しいと思った。また、主人公の今の「彼女」が獣医なのだが、それも良い。

人工知能と動物が、なぜ恋愛対象になりえないのか?もしくは普通でないのか?

いま日本にいる14歳以下の子どもよりも、ペットの犬猫のほうが多いらしいが、それでも動物は結婚相手になりえないのか?

性愛と密接に結びついているように思う。

大学の授業で「ロボットと人間」というテーマの授業を聞いていて、人工知能には愛情をもてないと答える学生が意外と多い。人工知能の感情はインプットされたものだと考えると駄目だと言っていたように思うが、我々が脳にインプットされたデータを出力していると考えたらやってることは同じじゃないのだろうか。動物に懐かれてるように感じるのも、自分の思っていることを投影しているのではないか。

人に対しても同じことをやってるという不安はないのだろうか。

こじらせてるかな?おやすみ。