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【読書感想文】絶対零度のエクリチュール

佐藤理史『コンピュータが小説を書く日』日本経済新聞出版社

べらぼうに面白い。普段何気なく用いている言語について、圧倒的な外側、つまりコンピュータの側から捉えたときに、言語にはどのような難しさがあるのかがよくわかる。そういった意味で我々が言語を扱うこと自体についても考えさせる本である。AIという言葉はある種の未来的なロマンティックさを持っている(我々が勝手に持たせている)。しかしこの本は、現時点でのAIとはこういったものであると認識を改めさせてくれるようなリアリティがある点でもよい。「AIが書いた」小説が掲載されているが、まさにそんな感じだった。自動に生成された二つの文の意味の整合性を判定できるアルゴリズムが、万が一できたならば文学史的にも革命が起ると思う。欲をいえば、整合性の判定は自動学習にしてほしい...それはきっとどんなコンテクストにも縛られないエクリチュールになる。芥川の「MENSURA ZOILI」的な夢のプログラムがあったら、逆に小説の生成なんて容易いのにと人工知能系の本を読むと思うのだった。おやすみ。